2013年8月22日木曜日

最近の若者の性事情を知る一助に参考にしてください。

「性の氷河期」シーズン2
セックスはめんどくさい」「性に関心がない」。そんな若者の"異様な"性の実態を本誌3月7日号で報じた。ところが、現状はもっと深刻で、セックスしたくても"できない"若者が増えているというのだ。アダルトビデオが"教科書"という若者の、データだけではわからない悲痛な声を聞いた。

 中高年の方はにわかに信じがたいだろうが、最近、若者の間でひそかに精力剤が"流行"しているという。
 精力剤販売の最大手「あかひげ薬局」本店(名古屋市)の販売員は、驚いた様子でこう言うのだ。
 「ここ2、3年で若いお客様が増えています。『そういう気にならない』と言う人もいれば、途中で萎えてしまう『中折れ』や『勃起しない』という身体的な相談もあります」
 本当なのか?

 「彼女には内緒にしていますが、僕は、昨年春に童貞を捨ててから、ずっと精力剤を使っています」

 そう告白するのは、都内在住のフリーター男性のAさん(28)だ。

 「今、付き合っているのが、初めての彼女。その彼女に童貞だと知られたくなかったので、最初にセックスする時は、『うまくやらなきゃ』と緊張していました。それで『中折れ』してしまった。すると、彼女が『大丈夫?』って言ったんですよ。ショックでした。だって、僕はダメだってことでしょ? 今も月1回程度セックスするのですが、初めての体験で怖くなって、彼女と会うときは必ず精力剤を持ち歩いています」

 ただし、マスターベーションをする時は精力剤は使わないという。

 「飲まなかったら不安でセックスできないと思います。保険というか、安心薬みたいな感じです」

 彼女には「かっこ悪い姿は見せたくない」との理由で、今後も絶対に打ち明けないという。
 本誌08年3月7日号でお伝えしたとおり、財団法人日本性教育協会によると、全国の中学、高校、大学生の男女に、「性的なことに関心があるか」と尋ねたところ、「ある」と答える学生が99年から男女とも急激に減っている。最新の調査(05年)と比較すると、「性的なことに関心がある」と回答した男子高校生は99年に90・5%いたが、05年には78・5%に減少。女子高校生も同じく、76・9%から54・8%と急激に減っている。
 前回紹介した若者たちは、「めんどくさい」「気持ちよくない」とセックスを嫌う傾向が目立ったが、Aさんのように、「したくてもできない」若者がいるとは驚きだ。
 やはり精力剤を飲む関西在住の男子学生Bさん(24)にも、話を聞いた。
 
 「セックスは正直、あんまり好きじゃない。『セックスは子供を作るためにする』って教わったから、僕は、結婚前にセックスすることはあんまりいいことだとは思いません。本音は結婚するまでオナニーだけでもいいんですよ。でも、彼女は僕としたいみたいで、家でキャミソールを着たり、腕を触ってきたりして誘ってくるんです。正直ちょっと引きます。そこでまた冷めちゃうんですが、あまりにかわいそうなんでしてあげたいんです」

 ところが、彼女とセックスしようとすると、勃起しないという。

 「AV(アダルトビデオ)や成人漫画だったら勃起するので、オナニーはするんですが……」

 Bさんのように、生身の女性のみを対象に、勃起しないケースはともかく、生身の女性の膣内で射精できない"膣内射精障害"が若者を中心に増加傾向にある。前出のあかひげ薬局によると、その相談に訪れる若者も珍しくないという。

 「来店されるお客さんの場合、畳の縁や床、机などを使った、刺激の強すぎるマスターベーションが原因というケースがほとんど。実体験で生身の女性とセックスせずに、先に視覚、触覚に強すぎる刺激を与えたために、若くても問題が生じるケースが増えていると思います」(広報担当者)

 彼女とセックスをしようと、先輩のアドバイスから精力剤にすがったBさんだったが、

 「(精力剤を飲むと)体は熱くなるんですけど、頭が冷めてるっていうのか……燃えないんです。もちろん、彼女には言えません」

 交際して今年で2年目になるが、彼女と一度もセックスしていないという。


◆"顔射"するのは優しい男の証?◆

 なぜ、精力剤を使う若者が増えているのか、前出の広報担当者はこう分析する。

 「理由としては、まず一つに、食生活の不節制だと思います。特に若い人は食生活が乱れやすく、ビタミン類やアミノ酸など勃起に必要な栄養素が不足している。もう一つは、性に対する情報の刺激が強すぎるんじゃないかと思います。視覚や聴覚、嗅覚、触覚など、それぞれ総合して脳が刺激され、勃起を促します。昔は活字だけでも興奮できましたが、今は露骨で刺激的な情報が多い。それらがもたらす刺激が強すぎるのかもしれません」

 事実、前出のAさんもこう話すのだ。

「セックスの仕方はAVを見て知っていましたが、初めてした時に、彼女がAVみたいに気持ちよさそうじゃなかった。それで、途中からどんどん気まずくなって、焦ってしまった」

 若者の性への関心が低くなってきた99年以降といえば、各家庭にインターネットが普及し、学生が携帯電話を持ち始めたころだ。その学生が生まれた80年代には、すでにAVがビデオ店の店頭に並んでいた。
 そんななかで、若者はどんな知識を得たのか。名古屋市内に住む男子学生(20)は、事もなげにこう言ってみせる。

 「AVは基本のキですね。俺は毎回顔射(精液を相手の顔に出すこと)します。理由は特にないですよ。AVでやってるから、普通って感じです。俺、優しいから、(膣の)中に出さないんですよ。彼女も喜んでます」

 彼にとってAVは"教科書"だったようだ。

 「学校の性教育とかじゃわかんないし、ほとんどの人がAV見て勉強するんじゃないんですか? 女のふるまいもAVと一緒ですよ」

 東京在住のフリーター女性(19)も、こう話す。

 「小学5年の時に友達と『勉強会』をして、初めてAVを見ました。それから、友達に借りたり、彼氏のをこっそり見たりして『お勉強』してました。もちろん、彼とする時は、気持ちいいフリをします。AV女優の声の出し方とか、表情やしぐさをマネします。それが礼儀だし、シラけてたら相手に悪いでしょ」


◆「嫌」と言えない純愛志向の裏側◆

 そんな女性の"裏側"を知ってか、男性からも冷めた意見が上がる。
 一昨年、初体験したという大学生Cさん(21)の話。

 「彼女のことは根本的に信用していません。セックス中に気持ちよさそうにしてても、心の中では『どうせ、演技だろ?』って思ってる。そもそもセックスがあまり気持ちよくない。初体験も周りに言われて、やんなきゃいけないからしたという感じでした」

 前出の性教育協会の調査では、男子高校生の59%、男子大学生の87%が「アダルトビデオを見る」経験があり、セックスについての知識を「ポルノ雑誌/アダルトビデオ」で得ていると回答したのは、男子高校生で42・8%、男子大学生では63%にもなった。
 調査にかかわった活水女子大学の石川由香里准教授は、こう指摘する。

 「AVの問題点は、経験がなくても、男女が異なることをわかったような気になってしまうことです。男性ってこういうものなんだ、女性とはこういうものなんだと、大人がつくったステレオタイプにのみ込まれてしまう危険性はあります」

 性への関心が低下する一方で、同協会の調査では、「性交に愛情が必要」と考える割合が、特に女子高校生で増加している。このため、最近の女子は、何よりも恋愛に高い価値を見いだす、「純愛志向」になってきた一方、男子はそれほどでもない。
 石川准教授によると、以前の「純愛」は、結婚してから性交をする貞操観念にもとづく純潔主義だったが、今は性交も恋愛の手順の一つとしてとらえている傾向にある。そのため、「愛がなければセックスしてはいけない」と考えると同時に、「愛があればセックスをするのが当然」という価値観が生まれているのだという。
 「純愛志向」の女性はどんなセックスをしているのだろう。交際相手に言われて、避妊薬のピルを服用しているというOL、D子さん(26)に話を聞いた。

 「彼は『気持ちよくないから』と言ってコンドームをつけてくれません。でも、彼を好きなので断れないし、彼が気持ちよくなってくれればと思って我慢しています。彼は口でしかイケないらしく、最後はお口でします。毎回だから、嫌なんですが、嫌われるのが怖くて言えません」

 純愛志向の裏には、D子さんのような女性がたくさんいる。赤枝六本木診療所の赤枝恒雄院長によれば、中絶する女性の多くがコンドームをつけずにセックスをしているという。

 「その理由のほとんどが、『彼氏がつけてくれなかった』です。ちゃんと言わなきゃダメだと言っても、『つけないほうが気持ちいいって彼が言った』と言う。ひどいのは、『他の子とする時はつけているけど、おまえは特別だからつけない』と言う男。それを彼女たちは信じてしまうんです」

 体よりも心に重きを置く純愛志向の女性と、問題を抱えるが相手に相談できない男性。今後、若者の性はどこへ向かうのだろうか。

 「努力が実を結ばないという社会背景の中、純愛志向の多くは"運命"を信じている。しかし、それを信じるあまり、努力は無意味と感じてしまい、ハナから努力しようとしないのは問題。さらに、男女の価値観が固定化されてしまうと、今後、ますます男女間のミスマッチは多くなるでしょう」(石川准教授)

 "性の氷河期"はまだ終わらないようだ--。

週刊朝日

0 件のコメント:

コメントを投稿